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もうららいふ

快適らいふを目指して、実践したことを書いています。引き寄せの法則が好き。ビジネス書もよく読みます。

宮沢賢治「永訣の朝」 とおくへいってしまう…雲の国

「とおくへいってしまうわたくしのいもうとよ」

肺結核を患い今にも命が消えそうな妹の「とし子」。この作品には二つの雲の表現が見られる。賢治がどれほど空を眺め、行ってしまうだろう妹の世界に思いをはせているように感じた。「うすあかくいっそう陰惨な雲」に、薄い生命の燈が陰惨な雲が今にも覆い隠そうとしている状態。「蒼鉛いろの暗い雲」あの世という暗く手の届かない世界へ行こうとしているとし子。そして、とし子は兄の賢治にこのような要求をしている。(あめゆじゆとてちてけんじゃ)「みぞれを取ってきて」と何度も賢治に要求している。それはなぜなのか?高熱に苦しみ、水分を必要としているのなら、病院の水でも氷でもいいのではないか?なぜ今降っている「みぞれ」なのか。しかも使い慣れた二つの陶椀を兄に託して懇願している。

 「お前がたべるあめゆき」最後の晩餐

自分の死を悟ったとし子は、賢治と最後の晩餐をしたかったのだ。小さい頃から一緒に育った兄と妹。この2人には、男女や兄妹など俗世の呼び名では説明できない魂の結びつきがある。

優しいとし子は、悲しむ兄のために自分が今行かなければならない世界の食べ物を、最後の晩餐として賢治と食したかったのではないか。

それを理解した賢治は、みかげ石材の上によろめきながら立ち上がり、「銀河や太陽、気圏と呼ばれたせかいの」から、現世の最後になる食べ物を椀に入れた。

その時賢治は、みぞれを降らす乱れた空の向こうの美しい雪に、これからとし子が行かなければならない世界に望みを託した。

「どうかこれが天上のアイスクリームになって」と願う。 

「永訣の朝」賢治の思い

賢治はこの詩の中で、とし子の死にゆく現実を、心の中のとし子に話しかけている。

「きょうのうちに とおくへいってしまう」「死ぬといういまごろ」「きょうおまえはわかれてしまう」(このフレーズは2度使われる)

そう何度も死を投げかけて、賢治はとし子との永遠の別れを覚悟する。

「わたくしもまっすぐにすすんでいくから」に、もう一緒にはいられないという賢治の思いが伺える。

そして最後の行「わたくしのすべてのさいわいをかけてねがう」と、賢治は天上に向かうとし子の幸せを願いつつ死を受け入れようとした。

賢治の本音

最後に、「きょうおまえはわかれてしまう」2行の間に、(Ora Orade Shitori egumo)という賢治の本音がみえる。当時ローマ字はそれほど普及していない。賢治はこの部分をアルファベットにすることで、自分も空の向こうへ行きたい思いをとし子に心の中で伝えたのではないか。この体験があって、賢治の名作『銀河鉄道の夜』が生まれ、賢治は好きな汽車に乗り、とし子がいる銀河への旅に出かけるのではないだろうか。

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